図書室の魔法

図書室の魔法

2021年7月24日

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「図書室の魔法 上・下」ジョー・ウォルトン 創元SF文庫

 

実は私は、ファンタジーがちょっと苦手という本好きの風上にも置けないやつなのだが、これはものすごく面白かった。夫が面白がって読んでいたので手を出したのだが、面白い、面白いと言いながら読んでいたら、「ファンタジー、好きじゃないんじゃなかったっけ?」とつっこまれてしまった。
 
そうなんだけどね、この本のすごいところは、もしかしたらこれはファンタジーとして読まなくてもいいんじゃないかってことだ。それは読み手に委ねられてるんだよね。
 
愛する双子の片割れを失い、足に障害を負い、狂気の母から逃れ、顔も知らなかった父親の保護下で窮屈な寄宿舎生活を送らねばならない15歳の少女が、山ほどSF本を読むことで孤独から逃れ、仲間を得、生きる力を取り戻していく。
 
文章には、少女の読んだ本の題名が溢れ、それへの感想が織り交ぜられながら物語が進む。本を読むことは、日々の体験と同じ重みを持って彼女を動かし、変えていくきっかけとなる。本を読むこと、探すこと、手に入れること、語ること。それがどれだけの重大事であり、喜びであるかが描かれている。
 
いやあ、面白かった。先日、夫と川越に散歩に行ったのだけれど、店で食事を待つ間、彼は本を読みっぱなしで全然喋ってくれなかった。つまらん、と私は思ってたのだけれど、その時夫が読んでいたのがこの本で、だとしたら、まあ仕方ない、私と喋ってる場合じゃないよなー、と納得してしまった。

2014/9/30