大阪ハムレット3

大阪ハムレット3

2021年7月24日

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「大阪ハムレット3」 森下裕美 双葉社

「大阪ハムレット4」を先に読んじゃったのだが、何故か三巻だけは図書館になかった。

先日、おちびが二泊三日の、学校のスキー学習に出かけて、初日の夜に発熱した。翌日、迎えに行って連れ戻したのだが、これがインフルエンザだった。イナビルを吸入して、二日で熱は下がったのだが、保菌している間は隔離が必要だという。体ばっかり元気になっても、うろつかれては困る、ってんで、おとなしくさせておくために図書館の「大阪ハムレット4」を渡してやったら、三巻も読みたいという。そうかそうか、それじゃあしょうがないなあ、と本を買うことに常に後ろめたさの伴う母は、言い訳ができて大喜びで三巻を買ってしまったのである。

児童文学が、明るい明日を信じることができる文学だとしたら、この漫画も、同じ方向にある。最終的に、人は信じるに足る、といつも言ってくれるのだ。でも、それはたまに苦い味がするものでもある。人のために、とことん尽くし続けて、家族を踏みにじっちゃう悲しいお兄ちゃんなんかもいるからね。だとしても、私はこの漫画の持っている基本的な姿勢が好きだ。

得体のしれないキャバ嬢に夢中になっている母親が、探偵事務所に、その娘の素性を調べさせる。探偵は、実はそのキャバ嬢と顔見知りだ。

「三輪アリサ 十九歳 両親が育児放棄で三歳で児童養護施設に預けられてます
その後両親が離婚
中学卒業の時 いったん母親のもとに帰されます
女衒て知ったはりますか?
母親があちこちに借金してて娘売るために引きとったんですわ
半年ほどして大阪の風俗の店から逃げて母親もキッチリ罰受けて
娘に会えんようになってます」
「ああ こわい こわい」
「これで よう わかりましたやろ」
「ええ ホンマに」
「あの娘は なんの罪も おまへん
みんな大人が寄ってたかって ひどいめにあわせたんですわ
この娘は 一片も 汚れてやしません」

(引用は「大阪ハムレット3」より)

世の中は、そんなに簡単に回りはしない。
でも、このおっちゃん探偵の言葉は、私の胸に響く。

2012/2/13