「和」のウォーキング

「和」のウォーキング

2021年7月24日

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「体と心がラクになる「和」のウォーキング“ゆっくり歩き”で全身協調性と深層筋が目覚める」

安田登 祥伝社

ウォーキングはとても効果的なエクササイズと言われている。よく推奨されるのは、足幅を広く、早足で歩く方法だが、本書で勧められているのは、膝への負担が軽く、疲れないスローウォーキングである。ゆっくりと長い距離を、悠然と景色を眺めながらすり足で歩く。疲れないから、筋肉も鍛えられないし、脂肪も燃焼しない、ダイエットにもならない。でも、長く使い込んだ太鼓が徐々に良い音を出すように、体をゆっくり大事に使う事が重要なんだそうだ。単なる技術論だけでなく、精神論と言うか、生き方にまで踏み込んでいる本である。

最近、ボクシングで肘を痛めてしまって、いわゆる腱鞘炎だと思うのだが、ネットで調べて、これはテニス肘と呼ぶのだと知った。テニスしてないのにね。肘の外側が痛む。安静にしておけば良くなるかと思っていたら、日に日に痛みは増す。サポーターをして湿布を貼ったりしていたが、ふと気づいて、ネットで肘の痛みを検索したら、出るわ出るわ、対処法が巷には溢れている。自称ゴッドハンドが「これですぐよくなる」と言っている方法をいくつか試したら、たしかに少しだけは楽になる。でね、その方法というのが、実はこの本の中に出てくる、関節が傷んだらこうしなさい、というのに非常に近似していた。

つまり、傷んだ場所周辺の筋肉がどんどん萎縮して固くなって痛みが増すので、緩めてあげなさい、ってことなんだな。ゴッドハンドの言う通り、と思うだけでちょっと気持ちが楽になると体の緊張も解けるから、筋肉も緩むのかも。そういう意味では「この人はゴッドハンドだ」信じることも、それ自体が治療の一環なのかもしれない。

心をゆったり持って、筋肉も緩めたら、なるほど、痛みは遠のいていくのね。と言っても、完治までは時間がかかりそうだが。やれやれ。

ちなみに、この作者はこの間、NHK100分で名著「平家物語」で朗読を担当されていた。お腹にずっしりと響く、美しい朗読であった。

2019/7/29