ホームレス中学生

ホームレス中学生

2021年7月24日

「ホームレス中学生」田村裕

いや、こういう本は、本来、図書館で借りちゃいけないんだと思うんですよ。待ってりゃ、古書店に山ほど出てきますから。税金で、大量に買わせるのは間違いだと思います。ごめんなさい。でも、図書館で、借りちゃいました。

麒麟は、ずいぶん前から知っている。M-1グランプリに初めて登場したとき、「麒麟って?」と吉本の社員でも知らない奴がいたらしい。でも、麒麟の存在感は圧倒的で、彼らのおかげで、どれだけM-1が盛り上がったことか。昨年、決勝に進めなかったのは、痛恨の出来事だった。

麒麟は、川島で、もっているのかと最初は思っていた。でも、M-1の本番の最中に、田村がいきなり「がんばれ俺達!」と言ってしまい、川島が思わず笑ったシーンを見て、このコンビは、互いに必要なんだなあと思った。「あれは、田村が言ったから、いいんですね。」と、後で川島がしみじみ言っていた。考えすぎるくらい深い川島と、どこまでもアホで能天気な田村。だから、麒麟は、いいのだ。

田村がホームレス・・と言うか、大変な生い立ちの持ち主だと言うことは、この本が出るよりずいぶん前から知っていた。お笑いのネタにもなったし、「すべらない話」で本人も語っていた。J様が田村のことをかわいがっていて、J様の話にも、よく出てきていたしね。高校時代引きこもり気味だった川島の方が、J様に近い気もするけど、だからこそ、アホで能天気の田村が、J様は好きなんだろう。川島と、おんなじに。

何度も書くけど、田村は、アホで能天気だ。この本を読んで、改めて、思う。同じ体験をしても、田村のように行動したり、田村のように感じたりする人間は少ない。もっと上手に立ち回るだろうし、もっと、人を恨むだろう。でも、田村は、子どもみたいな発想で行動し、人を恨んだり呪ったりもしなかった。不思議なくらい。

田村の父親はひどい親だと思う。ネグレクトで、虐待だと思う。なぜ、恨まない?子どもたち三人に「解散!」と告げて、逃げてしまう。なんと、その後も一度、街中でばったり出会って会話を交わしておきながら、また「解散!」と行ってしまったってエピソードには、さらに驚いた。ダメだ、こんなおやじに、親孝行とか言って、金を渡しちゃダメだ、絶対に。

田村のまっすぐさは、なくなったお母様から渡された宝物だと思う。子どもに愛情を注ぎこむことの大切さが、身にしみてわかる。どんなときでも、お母さんに恥ずかしくないように、今度お母さんに会った時に、何でも話せるように、と、田村は考える。コンビニで、お腹ペコペコで、お金が全くない時に、パンを盗もうと何度も考えて、お母さんのためにやめた話は、不覚にも、ぐっと来てしまったよ。

棚の上に本を置いておいたら、おちびも息子も「あ!『ホームレス中学生』だ!」と指差して叫ぶ。おお、こんなにもあらゆる年代に知れ渡ってるのね。さすが二百万部。二億円入るって言うもんなあ、田村に。大丈夫か。

「どんな話だった?」と子どもたちに聞かれたので、「段ボールは、おひたし感覚で水に浸して食べても、臭くてまずいってことがわかった。」とこたえておきました。

2008/3/19