こねてのばして

こねてのばして

2021年7月24日

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「こねてのばして」ヨシタケシンスケ ブロンズ新社

 

「こねてのばして」は非常にシンプルな絵本だ。パン生地状の物体を、朝起きたら、ひたすら、こねてのばして、またこねて、つまんで、つっついて、すわらせて、さわって、おどって、ねかせて、また起きたらこねて、のばして・・・とただただ続けるだけの絵本である。それだけなのだが、これは、あれだぞ、何かににてると思ったら、赤ん坊を育てている過程と同じじゃないか、と思うわけである。

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「ヨチヨチ父ーとまどう日々ー」ヨシタケシンスケ 赤ちゃんとママ社

 


と思っていたら「ヨチヨチ父」である。こちらはもっとダイレクトに、子育てに直面した父の戸惑いと迷いと悩みと苦悩と喜びが、明白に描かれた本である。子を産み、主体的に育てている母に伴走する父のリアルな感情が誠実に描かれていて、結構、感動する。毎日、こねてのばしてつついている父親の実感がちゃんと伝わってくる。
 
妻は母となり、不機嫌になるのだよね。知ってる知ってる。それを、夫は父となって、なんとかしてやろうと思うのだが、うまくいくときも、行かないときもある。ただ、いつもちゃんと子や妻への愛情はあるのだな。そこんとこが、ちゃんと伝わるので、とても良い本になっている、と思う。
 
これは、ちゃんと育児に向き合っている父の本だ。全然共感できない父親だって大勢いると思うけれどね。そうそう、といえる父親を、ちゃんとしてるね、と私は思う。

2020/10/15