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「禁断の魔術」東野圭吾 文春文庫
前に読んだことがある、と思ったら、同題の「禁断の魔術」内の短編の一つ「猛射つ」に加筆して長編化したものだった。だから、ストーリーの骨格は知っていたのね。
短編だとどうしても人物像が書き込めなかったのか、薄っぺらな印象しかなかった登場人物が、ここでは血肉を持って立ち上がってくる。単なる悪役が人間味を帯びたり、ただ、かわいそうなだけだった女性が、意思を持って生きる人間であることに気付かされる。そういうことがしたくて、長編化したのだろうか、作者は。
知っているはずの話なのに、新鮮に楽しめてしまった。やるなあ、東野圭吾。
2018/10/23