明日は生きてないかもしれない・・・という自由

明日は生きてないかもしれない・・・という自由

2021年7月24日

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「明日は生きてないかもしれない・・・という自由

私、76歳 こだわりも諦めの力にして、生きてきた」

田中美津 インパクト出版

というわけで、白いミニスカートでウーマンリブを戦い、メキシコに渡ってシングルマザーとなり、鍼灸師として長らく生きてきた田中美津さんの本である。

ウーマンリブとフェミニズムはちょっと違う。とは感じていたが、どう感じるかというと、フェミニズムはやっぱり学問なのである。に対して、ウーマンリブはもっと泥臭く、理屈じゃなくて、「私は私の生きたいように生きるのよ!!」という活動、運動である、という捉え方である。それはあながち間違いではなく、ウーマンリブの先頭に立っていた田中美津さんは、まさしくそうやって、学問や理屈ではない、自分の人生や生活の中で、女性であることと自由であることを両手で掴み続けた人だ。

この本の中で、かなり多くの部分が小熊英二批判に費やされているのだが、それは、彼がウーマンリブ運動を、感情的なものとして捉えようとしていることへの怒りであり、かつ、「白いミニスカート」「オールドミス」などのキーワードを使い、「大義」や社会運動よりも「私」の欲望を優先させることで大衆消費社会への触媒的役割を果たした、という評価への異議申し立てである。小熊さんは頭でっかちだからなあ。彼は上野千鶴子先生が大好きで、だから、田中美津がかっこ悪く見えるのかなあ、と思う。でも、田中美津の迫力は、小綺麗な学問とは全然別のところにあって、泥々になりながら彼女が耕した畑があったからこそ、フェミニズムというきれいな学問も成り立ったのではないか、と思う。

どんな社会問題も、男性が中心で、女性をお飾りにしがちなところはあった。私は鶴見俊輔を敬愛するものであるが、その一つには、彼だけが「普通のおばちゃん」の凄さ、というものに敬意を評し続けたからである。学生運動家が「嫁にするなら活動をやってない女がいい」などとほざいていたと読むとうんざりするなあ。

いつ誰が死ぬかわからないから、人はみんな横並び、という彼女の言葉は、何しろコロナなんてものが流行りだした今現在においては、まさしく身に迫るものであり、男も女も子供も老人も、みんな横並び、同じよね、上も下もあるもんか、とつくづく思う。

2020/2/24