「家族の幸せ」の経済学

「家族の幸せ」の経済学

2021年7月24日

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「家族の幸せ」の経済学 データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実

山口慎太郎 光文社新書

 

結婚、出産、育児、育休、イクメン、保育園、離婚などについて、思い込みや伝承ではなく、データ分析という手法で「真実」に迫ろうとしている本。
 
結婚は、女が従っているふりをして男を手のひらで転がすの一番幸せなのよ、とか、恋愛結婚で燃え上がると長続きしない、とか、やっぱり男は稼ぎじゃなきゃね、とか。いろんな事が言われているけれど、どんなふうにみんな結婚しているのか、どんな人が幸せなのか。それを、データから分析する。最近はマッチングサイトで知り合う男女が非常に多いらしい。マッチングサイトはデータにあふれている。なかなか興味深い現実が見えてくる。なるほどね。現実に、誰かに告白して振られるのは辛いけれど、マッチングサイトだと匿名でいいねを送ったりして、振られても傷つかないしね。でも、なんかダイナミックじゃないよなあ。
 
結婚の話からはあんまり得るところはないような気がしたが、母乳育児が本当に一番なのか、帝王切開は良くないのか、幼児教育は本当に効果があるのか、などは厳然たるデータがあると説得力は増す気がする。育休取得と夫婦の仲の良さの関係とか、結構面白いしね。育休を三年取れるようにするよりは、一年のままで、保育園を充実させて待機児童を減らすべきだという提言は実に正しい。
 
最近聞いた話。夫がイクメンぶって育休を取得しても、結局の所、買い物や洗濯などをちょっと手伝ってくれるだけで、あとはスマホでゲームびたり。結局、妻は、赤ん坊の面倒のみならず夫の面倒も見なければならなくなって(「おれのご飯まだ?」「あ、ついでにおれにもお茶入れて」などなど・・・)むしろ仕事に行ってくれたほうがよほど助かる、というケースも多いらしい。育休をとった男は、育休期間中にどのように過ごしたかレポート提出を義務付けてほしい、という妻側の意見があったという笑えないお話。これは、この本に書いてあったわけじゃないけどね。
 
物事を主張するには根拠が必要、というのは道理である。子供は三歳まで母親が育てるべきだ、とか、何が何でも母乳で育てろ、と主張する人は、それが本当にどのようなメリットがあったのかを客観的データで示して欲しい。と思っていたら、この本が、その役目を果たそうとしてくれている。ただ、データはデータでしかないので、それをもとに、何を選び、どのようにやっていくかは、やっぱり家庭内できちんと話し合うべきだと思うね。遠慮のない、本当の気持ちを出し合う夫婦の話し合い。それができない家庭が多いような気がするんだなあ。妻よ、頑張れ。夫も、頑張れ。

2020/1/23