ぞうのボタン

ぞうのボタン

2021年7月24日

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「ぞうのボタン」うえののりこ 冨山房

 

図書館の読書会で教えていただいた本。「ねずみくん」シリーズの上野紀子さんが絵を書いている絵のない絵本だが、「原案 なかえよしを」となっている。
 
なかえよしをさんと上野紀子さんは、実はご夫婦で、若い頃、アメリカに行こうと思ってその旅費を作るために、この絵本を作り上げた。が、日本の出版社にはことごとく断られてしまったので、アメリカの出版社に持ち込んだら、編集者が「これ、買うわ」と言ってくれたらしい、とは、読書会で得た知識。だから版権はアメリカである。
 
ぞうくんのお腹にはボタンが付いていて、それを外すと皮がべろーんと脱げて、中から少し小さい別の動物が出てくる、というのをどんどん繰り返して、最後に小さいねずみくんになるのだけれど、そのねずみくんが皮を脱いだら、そこからべろ~ん、とまた大きなぞうさんがでてくる。
 
いや無理でしょ、その小さいところにぞうさんはそもそも入れないでしょ、というのがオチなんだけど、小さいものの中に大きいものがある、みたいな方法論はこの頃からこの人達の中にはあったんだな、とつくづく思う。いわば、ねずみくんシリーズの原点みたいなものだ。
 
私は「てぶくろ」を思い出した。普通の大きさの手袋なのに、入れて下さい、といろいろな動物が入り込んできて、ほんのちょっとだけですよ、なんて言ってるうちに、どんどん、どんどん押し広まって、大きな動物が入って。でも、最後には普通の大きさの手袋が落ちていたりするんだよね。あれに似てる。
 
文字なしに楽しめるという意味では世界中に通じる絵本なんだとは思うけれど、べろ~んと脱いで皮だけになった動物の表情が、うつろすぎてなんだか恐ろしい。むくろを脱いでいるようで気味が悪い。本当に、子どもは楽しむんだろうか、とちょっと不思議に思う絵本だった。
 
 

2018/3/13