たまたまザイールまたコンゴ

2021年7月24日

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「たまたまザイールまたコンゴ」田中真知 偕成社

 

田中真知さんの「アフリカ旅物語」なら、ずい分前に読んだ。調べてみたら、1995年に出された本だ。子どもが小さい頃は旅に行くのもままならず、家にはりつけにされたまま、バックパックひとつ担いで海外を自由に旅する人たちの本を読み漁っていた。頭のなかだけで、世界中を駆けまわっていた。真知さんの本も、その中の一つだ。あの頃、真知さんはエジプト在住で、よく雑誌「旅行人」にアフリカの情報を書いていたっけ。
 
この本は、田中真知が1991年、奥さんと二人で丸木舟を漕いで一ヶ月かけてコンゴ川(当時はザイール川)を下った記録と2012年に今度は若い青年と二人で今度は丸木舟と動力船を使って下った記録が並べられている。21年も経ったのだなあ、としみじみ思う。世界は大きく変わったけれど、コンゴ川とその周辺の人々は変わらない部分もある、もちろんすごく変わった部分もある。
 
アフリカという土地は一筋縄ではいかない場所だ。豊富な資源があるのに、首長が自分とその一族にストレートに富が流れこむようなシステムを作ってしまうので、産業が起こらなかったり、物をもらうのになれてしまって、創りだす発想を失っている部分もある。だが、それとともにものすごく豊かなものもある。時間ぴったりに、合理的に動くことが正しいと思い込んでいる我々には決して得られないのびやかな生活もある。その一方で、簡単に死んでいく幼い命もある、虐げられた人々もいる。そんなことはわかりきっていることのように思うけれど、この本を読むと、やっぱり驚く、打ちのめされる、驚嘆する。
 
暑い暑い夏に、長男を産んだ。大きなお腹を抱え、汗びっしょりになりながら、「アフリカと思えば暑くない、アフリカと思えば・・・・やっぱり暑いいいい!!」と叫んでいた、若かった私。いつかアフリカに行ってやる、と「地球の歩き方」を買い込んで、地図を覚えこむほど眺めていたのだったっけ。でも、いまだに行っていない。
 
私は、いつかアフリカに行けるだろうか。と、この本を読んで、改めて考えている。

2015/9/16