つばめの来る日

つばめの来る日

2021年7月24日

180

「つばめの来る日」橋本治 角川書店

 

平成十一年初版。1999年か。平成の年号は換算にまだ馴染みがない。ノストラダムスの年だったのか。
 
短編集。この中の「あじフライ」が読みたくて借りた。16歳の少年が、同じクラスの同級生男子が大好きだということに気づき悩み、自分の母親に「僕は男が好きだ」と告げる話。橋本治もそういう人だったので、これは実体験も交えてあるのかもしれない。
 
橋本治は、評価分析をしないで、ありのままを受け入れ、そのまま映し出すようなところがある。それが非常に鋭くて、読み手に様々なものを突きつける。淡々としているのに、読み終えて打ちのめされるような気持ちになることが多い。
 
橋本治は、こんなふうに、自分に気が付き、それを理解し、受け入れていったのか、と思う。男が好きだ、ということだけでなく、人はいろいろなことで自分に気づき、それに戸惑い、不安になったり嫌悪したり諦めたり、そして受け入れたりする。
 
自分を受け入れる、というのは誰もが持つ永遠のテーマだ。それを淡々と少年の視点で見せられて、ああ、とため息を付きたくなった。美しい文学だ、と思う。

2020/2/12