ながいながい旅

ながいながい旅

2021年7月24日

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「ながいながい旅 エストニアからのがれた少女」

絵 イロン・ヴィークランド 文 ローセ・ラーゲルクランツ

梨木香歩の「エストニア紀行」で紹介されていた絵本。絵を描いたイロン・ヴィークランドはエストニアから戦火を逃れてスウェーデンに逃れ、そのつらい心の傷を、絵を描くことで癒していった経験を持つ。この絵本には、彼女のその経験が描かれている。

イロンのいちばんすきなお話は、女の子がながい、ながい旅をして、じぶんの力でちゃんとやっていくようなお話でした。(引用は「ながいながい旅」より)

この、イロンのいちばんすきなお話は、きっと「長くつ下のピッピ」だ。イロンは後に絵を出版社に持込み、リンドグレーンの物語の挿絵を手がけるようになる。彼女と彼女の愛犬の写真は「愛蔵版アルバムアストリッド・リンドグレーン」の203ページに載っている。

つらい経験を描いた絵本なのに、絵はとても美しい。絶望に打ちひしがれた少女が、だんだんに心を回復していくさまが、彼女の表情から読み取れる。小さな犬と仲良く過ごすことが、子供の心をどんなに支えていたのかも、よく伝わってくる。

美しい絵本だ。
2014/12/28