のっぽのサラ、草原のサラ

のっぽのサラ、草原のサラ

2021年7月24日

「のっぽのサラ」「草原のサラ」 パトリシア・マクマラン

「のっぽのサラ」は、ニューベリー賞、スコット・オデール賞受賞作品。
短いお話なんだけど、悪い人が一人も出てこない、温かい作品。

大草原の中にぽつんと住む、お父さんと女の子と男の子のところに、海辺の町から、新聞広告を見てやってきた花嫁候補の、のっぽで不細工なサラ。花の名前を聞き、歌を教え、馬の乗り方を覚え、屋根を修理し、嵐を乗り越えて。子供達も素直でまっすぐでかわいい、サラもお父さんも真面目で誠実で、素朴で。

「草原のサラ」は、その続編。続編って、つまんなくなったり、薄まってしまうものが多かったりするんだけど、この物語は違う。さらに強く、さらに濃く、さらに深く、物語は世界を広げる。

温かく楽しい事だけがこの世の中にあるわけじゃない。だけど、皆が一生懸命に互いに大事に思いながら、一緒に苦しんだり悲しんだりしながら、いつかきっと乗り越えていける。いいことも、きっとある。

そんな陳腐なことを、それでもしみじみと思い出させてくれる。誰もが真摯に生きている世界の物語。

古臭いといわれようと、こういうのが、子どものための物語であり、と同時に、子どもと生きる全ての大人たちの物語であると思う。私は、この物語が、好き。

2008/6/21