はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある

2021年7月24日

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     「はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある」
                    宮田珠己 本の雑誌社

わたしの好きなたまキングこと宮田珠己の本。本の雑誌に連載していた書評を集めたもの。雑誌連載中に読んでいたはずなのに、本になるとまたもや熟読してしまう。さすが、タマキング。

宮田珠己はマニアであり、オタクである。しかし、興味の先は、鉄道でもなければAKBでもない。石だったり、巨大建造物だったり、古い時代の日本だったり、石だったり、盆栽だったり。ちょっとフツーではないのだ。そこが好きだ。

雑誌連載中の彼の紹介で読んだ本が何冊かある。イザベラ・バードやピエール・ロチは、彼から教わった。江戸末期から明治初期の日本を旅して歩いた西洋人の旅行記だ。彼らが見て記録に残した日本は、日本でありながら、とてもエキゾチックな不思議な場所になっている。差別だ偏見だという以前に、それはとても魅力的だ。

宮田珠己の手にかかると、おっかないような無謀なような補陀落渡海も、妙に脳天気な明るいものになる。「自殺のような旅行のような補陀落時の謎」という章に載っている『観音浄土に船出した人々』(根井浄)、読んでみたいぞ。

その他にも、「木に子羊がなるって本当?」の『スキタイの子羊』(ベルトルト・ラウファー、ヘンリー・リー)や「日本全国そこらじゅうタヒチ」の『島の精神誌』(岡谷公二)、「なんかダメだったんじゃ?な武士の実態』の『戦場の精神史』(佐伯真一)、「存在しない島の地図」の『地図から消えた島々』(長谷川亮一)など、読みたい本が目白押しだ。

ベストセラーとは真逆の、めったに人の読まない、コアな分野の、でも、珍しくも興味深い本を知りたいのなら、ぜひ、この本を羅針盤にすることをおすすめしたい。

2012/7/31