もっと悪い妻

もっと悪い妻

4 桐野夏生 文芸春秋

悪妻が主人公の短編が六つ。悪妻というよりも悪母だな、というのもある。世間から見たら悪い女なんだろうけど、よくよく見てみると、悪いのは誰なのかな?と思ったりする。桐野夏生は意地が悪い。

本当のことが言えなくて、自分をよく見せようとしたり、こうじゃないかと勝手に決めつけたり。そうやってすれ違っていく男と女。どっちが悪いとか言えないじゃん。正直に本当のことを言って本当の姿を見せておけばこんなことにはならないのにね、と思うけど、人間って難しい。そのまんまの自分じゃいけないと思ってごまかしちゃう。桐野夏生は、そこから生じる齟齬を意地悪く拡大して描き出す。怖いねー。

でも、もういいかな、こういうのは読まなくても。と思う。こういうめんどくさいやり取りはもう、どうでもいい。私はもう、取り繕ったりカッコつけたりするのは卒業したい。ストレートに生きるほうがいいな。

で。このところ、本を読みあぐねていた。この本の前に一冊、読みかけていたんだが、タイトルと内容に差がありすぎて、違うじゃーん、とじりじりしていた。若い頃ならつまんない本でも、疑問を感じる本でも、とりあえず最後まで読んで、どこがどうつまんなかったかを考えたもんだが、この歳だともうめんどくさくって。で、ついに諦めて、この本に取りついたのだった。今年はあんまり読めないかも。