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「ものみな過去にありて」いがらしみきお 仙台文庫
学生時代、寡黙な男友達に、あるとき「実はいがらしみきおが好きなんだよね」と言ったら「実はぼくもだ。」とまるでなにか重大な秘密を漏らすかのように答えられたことを覚えている。あのころ、いがらしみきおはとんでもないエロ漫画ばかり書いていた。エロなんだけど、どこかにセンスがあって、胸の深いところを打つものがあった。・・・ってエロだぜ、エロ。と、未だにツッコミは入れたくなるんだけれどね。
私たちが結婚して最初に住んだのは仙台だった。仙台で、「ぼのぼの」第一巻と出会い、これはすごいぞ、と夫婦で感心した。あのエロはどこへ行った?と驚く転身ぶりだった。いがらしみきおは仙台で仕事をしていて、我々の行きつけの本屋にはサイン本が売ってあった。既に第一巻を持っていたにもかかわらず、サイン本を改めて購入したものだ。
「I(アイ)」や「かむろば村へ」みたいな路線に移ったのにも驚いたが、しかし、根本的なところは全く同じなのだろうな、と思う。
この本は、いがらしさんの半生記のようなものになっている。元々は、ネット上でゆるゆると書いたエッセイだったものだが。私が最初にいがらしみきおと出会ったあのエロ漫画はこの時期にこうやって描かれていたのか・・・などと個人的になつかしめる内容だった。
2010年3月11日に「大地震」という題名で書いある・・・というのは伝説のようになっている。うーむ、いがらしみきお、神なのか?
2013/3/4