アメンボ号の冒険

アメンボ号の冒険

2021年7月24日

「アメンボ号の冒険」椎名誠

子どもにも読んでほしいと思うから、と、小五以上で習う漢字には振り仮名がつけてある。

シーナが子ども時代、仲間と廃材を組んでイカダを作り、それで本当に花見川を下って海まで行った話や、埋立地のトロッコを作業の休み日にこっそり使って一晩キャンプした話、山で真夜中に幻灯機を使った話など、子ども時代の冒険物語が三つ、入っている。

いかだはその作り方や川の地図など、かなり詳細な図も載っていて、こんなの読んでたら、絶対に自分もやりたくなるわ!と思うんだけど、そう思う子って、最近は少ないんだろうか。

連発式輪ゴム鉄砲の作り方や、幻灯機の原理まで見るだけでわかってしまう図解など、わたしにしてみれば、わくわくものなんだけれど、ピストルのおもちゃや、ゲーム機なん家をごく普通に持っている今の子には、何の興奮も呼ばないものなんだろうか。

それにしても、これだけ無謀な計画を、皆で知恵を出し合い、工夫しあって実現してしまう子ども達の行動力には感服してしまう。イカダくだりにしても、夜のキャンプも、幻燈会も、大体、今じゃ親が許しやしないわ。こういう危ない遊びって、本当はものすごく大事な学習だったんだと思う。ないよなあ、こういう体験。なかなか。

本当は、六年生対象に、何週かに分けて読み聞かせてみようかと思っていたのだけれど、なんだかこれは、一人で図など眺めながら、ひそやかに読みつつ、自分も冒険してるみたいに段々興奮していく、そういう本のような気がして、みんなの前で大声で朗読するような本ではないような気がして、読み聞かせに使うのは止めてしまった。

夫は、自分で読むきっかけになるなら、いいんじゃない?なんていうんだけど。

2008/6/2