冷血

冷血

2021年7月24日

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「冷血」 トルーマン・カポーティ 新潮文庫

「ノンフィクション新世紀」で知った本。ものすごく苦労して、数週間かけてやっと読み終えた。そもそも、人が死ぬ話が嫌いなのに、これはいっぺんに四人を惨殺する話なのだもの、いやあ、つらいつらい。それでも読み終えたのは、やっぱりノンフィクションの力だね。しばらくイヤーな夢を見たり、寝付きが悪かったりしたけど、読みきれてよかった。

アメリカカンザス州で起きた一家四人惨殺事件。二人組の犯人は、わずか40ドルを盗むのに、四人を残虐な方法でなぶり殺した。家族四人の日常から始まって、二人の犯人の姿、犯行、逃亡から逮捕、死刑執行に至るまでのノンフォクション。怖いよー。

犯人の一人は非常に優れた頭脳を持っていて、自分でもそれがわかっている。ただ、本当に悲惨な生育過程の中で、きちんとした教育を受けられなかった。大いなる才能を持ちながら、知識に乏しく、世界が狭く、まっとうに生きることを知る機会を与えられなかった。彼の知る世界の中で、彼が最も有効に、彼の能力を活かそうとすると、こんなことが起きてしまう・・という過程が恐ろしいほどリアルに描かれていて、苦しかった。極悪人なのに、気の毒で可哀想な人だと感じてしまった。

ところで、この作品に対するオマージュとして、高村薫が同じ題名の小説を書いているそうだ。おお、これはまた読まねば・・・と図書館に予約を入れたら、なんと300人待ちでしたとさ。読める頃には、原本の内容を忘れちゃってるかも。

2013/6/14