オブリヴィオン

オブリヴィオン

2021年7月24日

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「オブリヴィオン」遠田潤子 光文社

 

「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」で「オブリヴィオン」が絶賛されていた。一人の人なんて、「2017年はオブリヴィオンを読むためにあった」とまで断言している。ほほう、そうなのか、と感心していたら、既に夫が図書館から借りて読んでおる。しかも、面白い、と。で、読み終わると同時に受け取ったのだが「先に言っておくけど、痛いからね。読後感がいいわけじゃないからね。」と警告が。でも、読みましたよ。痛みに耐えられなくなったら、そこでやめればいいんだから、と。結果、読み終えて、すぐに声に出してしまった。「うーん、でもさあ!!」
 
うまいんだよね。グイグイ読ませる。でも、何なんだよ、この展開、この終わり方。釈然としない。あー、言いたいことがいっぱいある。でも、ネタバレになるうう!
 
以下、読むつもりの人は読まないでね。具体的なことはできるだけ書かないつもりだけど、印象は書いちゃうから。
 
登場人物、全員弱虫ばっかりじゃんか、と思う。殴られたり蹴られたりひどい目に合わされても負けないとか譲らないとかいうのが強いというのなら、強いのかもしれないけどさ。結局、「本当のことを言っちゃったら嫌われちゃうかもしれないもん」だけじゃん。相手を守るためとか傷つけないためだとかを理由にして、本当のことを言えない、真実と向き合えない、弱虫だらけのお話。相手のために沈黙を守ったところで、現実は変えられない。真実はひとつなんだよね。その現実に相手はきっと耐えられない、立ち向かえないに決まってる、と最初から決めつけて、愛してるはずの相手を信用しない。単に信じる勇気を持てない人たちの話でしかないじゃん!!!と私は思う。
 
だから警告したろ、と夫に言われた。夫は主人公の奥さんのことが理解できないと言う。私は、そっちはまだ多少は理解の余地があるが、義兄の気持ちがわからん、と思う。たぶん、夫が男で私が女だからだろう。いずれにせよ、この作者は本当に女性なんだろうか、と夫婦で疑問であった。まさか「久保ミツロウ」パターンじゃなかろうな、と調べたけれど、写真を見ても女性らしいしなあ・・・。
 
つまるところは、私はバイオレンス物がダメだということなのかもしれない。ぶったり蹴ったり殴ったり冷水ぶっかけたり、はやっぱり苦手だ。そこに何の意味があるんだよー、と絶対に頭の何処かで思っちゃう。
 
「容疑者Xの献身」をいきなり思い出したりもした。あれも、愛する相手を守る話だったよなあ。ああいう守り方を美しいと思うのか、みんなは。本当に?私はダメだ。本当のことをちゃんと言えない関係性なんて、嘘ついて生きる人生なんて、私は認めないぞ。

2018/1/9