ゴースト

ゴースト

2021年7月24日

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「ゴースト」中島京子 朝日新聞出版

 

七話の短編が集まっていて、そのどれにもいろんな幽霊が出てくる。でも、怖くない。最初原宿の家の話なんて、切なくて暖かくて美味しそうでじんわりくる。古いミシンの話は、機械が生きているみたいに愛着が湧くし、戦後の浮浪少年の話はあったかい。「亡霊たち」という話は歳をとったおじいちゃんのところに「リョウユウ」が訪れてくる。遠い南の島で死んじゃった戦友が、話に来るのね。それが幻じゃなくて本当のことみたいで、怖くはなくて、むしろ、園児が軍歌を歌う幼稚園の現実のほうがよほど恐ろしくて・・・と、そこで、中島京子は安倍に怒っているのだな、と気がついた。わかるよ。
 
「あんたは気づいてないけど、ゴーストはいっぱいいいるのよ」
「そこらじゅうにいるの。だけど、ゴーストはなにもできない。死んだらおしまい。誰かに乗り移ったり、怨念をまき散らしたり、そんなことはできない。ただ、横にいて、思い出してもらうのを待ってる。あんたのつい隣で、まってるんだよ」
        
            (引用は「ゴースト」中島京子 より)
 
 

 

 

2018/2/13