キャパの十字架

キャパの十字架

2021年7月24日

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「キャパの十字架」文藝春秋 沢木耕太郎

戦場写真家ロバート・キャパを一躍有名にした「崩れ落ちる兵士」の写真。スペイン内戦で、兵士が銃弾を受け、絶命する瞬間を捉えたというこの写真は、本物なのか。以前から、幾度と無く疑念をもたれたことのあるこの写真の真相を、沢木耕太郎が追う。

写真が撮られた現場はどこなのか、使われた写真機は何なのか、そして残されている何枚もの写真は、どんな順番で、どんな瞬間に撮られたものなのか。写しだされた地形や影、写真のサイズ。現地に何度も足を運び、関係者に話を聞き、最後はじっくりと写真と対峙することで、作者はある真実に近づいていく・・・。

推理小説みたいな展開。写真の真実を追うことが、決してキャパを貶めるものではないと沢木は書いている。私もそう思う。キャパが、それを十字架として背負い、その後の人生を歩んでいったことに、ある痛ましさと、哀しみと、それ故の才能を改めて感じる。

それにしても、ゲルダが生きていたら。ゲルダ・タローのタローという名が岡本太郎から来ていたなんて、びっくりだった。

2013/4/30