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「水を縫う」寺地はるな 集英社
先に読んだ夫が「これはサワキのツボだよ」と言ったので読んだ。なるほど、まさしくツボであった。家族のこと、女らしさ、男らしさのこと、友達のこと、わかり合うということ。いろんなことが重なり合い、絡まり合って、最後に温かい場所が見えてくる。良い物語だった。
この国は、忖度するとか察するとかが大事にされているみたいだけれど、そのせいで、気持ちをきちんと伝えたり、問題と向き合ってそれについて深く考えるということがなおざりにされがちである。怖いから、逃げちゃうってのもあるのね。でも、なにかのきっかけでそれに気づいて、逃げずに見据える、考える、伝えるということができたら、そこで初めて本当のことを基準に向き合える、わかり合える。
これは、家族の物語だ。家族といっても、血のつながる家族ばっかりでもないのよね。人と人との助け合う、日々をともに過ごす集団の温かさ。自分に嘘をつかない生き方。そんなものを、静かに、まっすぐに提示する物語。
今まで知らなかった作家だった。これから、読んでみようと思う。
2020/12/2