コンパス綺譚

コンパス綺譚

2021年7月24日

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「コンパス綺譚」龜鳴屋 グレゴリ青山

 

石川県金沢市にある、自営出版の小さな出版社が出した531部限定の本。我が家に届いたのは、第101号だった。
 
グレゴリ青山が雑誌「旅行人」に2004年夏から2007年夏まで連載した漫画に解説と描き下ろしイラストを加えたもの。あの頃は子どもが小さくて旅に出かけるのなんて夢のまた夢で、毎号「旅行人」を眺めることで、海外に行った気分になっていたものだった。
 
大連の小盗児(どろぼう)市場で詩人安西冬衛(「てふてふが、一匹韃靼海峡を渡って行った」の作者)が見つけた方位磁石が、様々な人の手に渡って、その人の人生を方向づけていくという漫画。登場するのは、三船敏郎少年、城田シュレーダー、三船秋香、前田河広一郎、金子光晴、森三千代、郁達夫、内山完造、魯迅、阮玲玉、孫瑜、金焰、田漢…。戦前の中国大陸が舞台となっている。
 
金子光晴や森三千代、魯迅は、学生時代に何度も読んだものだった。あの冬至の大陸の独特な空気や色合いが煌めくようなマンガだ。以前に読んだはずなのに、かすかに思い出せるものがいくつかあるだけで、新鮮に読んでしまった。ああ、記憶力が・・・・。
 
香港に関する文章は、香港で書いたものだそうだ。香港の雑多な空気。行ってやる、香港。

2018/1/25