誘拐逃避行

誘拐逃避行

2021年7月24日

「誘拐逃避行 少女沖縄「連れ去り」事件」河合香織 新潮社

夜、寝る前に読み始めたら、止まらなくなって、結局、読み終えてしまった。

なんだかなあ。
ありそうな話だなあ。

10歳の少女と、47歳の中年男が、沖縄に逃避行して、捕まった事件。男は、誘拐だと断罪され、少女は児童相談所に保護された。けれど、その実態を調べてみると、主導権を握ったのは、少女であり、男は、少女を虐待から助けたい一心で、沖縄に逃げていったという。

男は、離婚暦二回、定職を持たない中年で、少女は、母親が十代で出産してすぐに姿を消したため、祖父母に育てられ、虐待を受けていたと証言している。
それが本当かどうかも、この本ではできる限り検証しているのだが・・・。

情けない男だなあ。
実刑に服しているけど、出所したら、またこの少女を追いかけ回すだろうな、間違いなく、と思う。
あるいは、この少女の代理になるような、別の存在を見つけるか、だ。
彼のやったことが犯罪かどうかは抜きにして(いや、絶対犯罪だと私は思うけど)、人間として、情けないとしか言い様がない。でも、本人の中では、愛情だけで行動したってことにしかならないんだろう。ああ、腹がたつ。

私は、ロリータコンプレックスという奴だけは、好きになれない。人の心は自由だから、お腹の中で何を考えようと自由だけれど、小さな女の子に手を出す、何らかの行動を起こす男は、絶対に許せない。
対等の意思ある関係を持つのが怖い、ただの臆病者の卑怯者じゃないか。
ましてや、少女相手にさえ、何も主体的にモノを考えられないこの男。
読んでいて、うんざりしてしまった。

心配なのは、この少女だ。
家庭に返されたというけれど、祖父母のもとで育って大丈夫なのかなあ。
祖父母も、実母も、この少女も、みんな、病んでいる。
その、大もとは、何なの?
何が原因で、こんなになってしまったの?

児童相談所も、警察も、裁判所も、無力だ。
子どもが幸福に育てる環境ってどうやったらつくってやれるんだろうね。
こういう子は、本当は、日本中にもっとたくさんいるんだろうなあ。

2010/8/14