メメントモリジャーニー

メメントモリジャーニー

2021年7月24日

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「メメントモリジャーニー」メレ山メレ子 亜紀書房

 

随分前に図書館に予約を入れていたらしい。予約本が届きました、と連絡が来たは良いけれど、一体どんな本で、なぜ読みたいと思ったのか全く覚えちゃいない。ふざけた名前の作者だし、題名もなんだか怪しい。大丈夫か?と恐る恐る読み始めたら、想像とは全く違った。全然大丈夫だったのである。
 
最初の方に「なにわホネホネ団」なんて団体が登場するので、怪しさ感は結構あったのだが、これが極めて知的レベルの高い、解剖学的な集団であった。と言っても、どんどん動物の死骸の皮をはいで行くので、やっぱり引く人は引くかもしれないが。博物館などには剥製にするべき動物の死骸がたくさん冷凍保存されているのだが、なかなか骨格標本や剥製を作成する暇と手間がないので、それを専門とするサークルがある。拠点は大阪市立自然史博物館。「タヌキ大の動物の皮むきをひとりでやりとげること」が入団テストであり、それに合格すれば、小学生でも入団は可能である。
 
上記は実はメインテーマではないのだが、作者は「なにわホネホネ団」に入団したり、虫をキーワードとした「昆虫大学」というイベントを催したり、「いきもにあ」という動物全体に関わるイベントに参加したりしている。そういう出来事を交えながら、最終的に何故か「ガーナに棺桶を作りに行く」というメインテーマに行き着くのだ。そこに至るまでに、新潟県の妻有郷に行ったり、西表島に行ったり、遠野を旅したりする。意味のない人生を楽しむために、最後にみんなに笑ってもらえるような棺桶を作っておくという目標にたどり着く過程がこの本である。
 
色々なイベントを行ったり、何しろアフリカまで棺桶を作りに行っちゃうくらいの人だから、相当強引なタイプかと思いきや、聡明、かつ現実的で、内省的な人でもあることが読み取れる。基本、真面目な人だよな、というのが読後感なのだ。やってることは弾けてるのにね。平日は普通の会社員として真面目に働いている、と言うが、そうだろうな、普通の人だろうな、とも思う。でも、どこかでやっぱり普通じゃないエネルギーがあるんだろう、面白い人だ。読めてよかった、と思える本であった。

2017/6/17