メモリークエスト

メモリークエスト

2021年7月24日

「メモリークエスト」 高野秀行  幻冬舎

また、高野さんです。最近、よく本を出すなー。少しお金もたまったでしょうか。

今回は、他人の記憶を探しに行く旅です。ふとした時に思い出す、あれはなんだったんだろう?あの人はどうしてるんだろう?という記憶を探しに行く旅です。

探しに行ったのは、タイのスーパー小学生と、根無し草の男、セーシェルの春画を収集している老人、南アフリカの大脱走男、旧ユーゴスラヴィアの内戦に消えた男、の五人。
結構な確率で、探している人に会えたのは、さすが高野さんです。
高野さんは、ものすごくざっくりした情報しか持たずに出かけて、すごい幸運に恵まれて、思いがけない展開で、いろんな人に出会えるんですよね。

だって、私たち、十年前に、旅先でちょっと会話を交わした人を国内で探したって、会えないことの方が多いと思いません?ましてや、初めて行く国で、他人様の記憶を簡単なメモにしただけで、探して歩くなんて。

そう思うと、高野さんって、とんでもない人です。

それにしても、なんでこの人は、いつもいつも、こんな変な旅をしているんでしょう。そして、なんで私は、いつもいつも、それを読んで、あろうことか、感動してしまうのでしょうね。

私がいくら珍しいものを探して人の行かない土地を歩きまわっているとしても、また、いくら旅先で変な人や奇妙な事件に巻き込まれやすい体質で一般の人の百倍くらい特殊な経験をしているとしても、所詮は一個人である。体も時間も一つしか持ち合わせていない。
翻って周りを見れば、日本だけでも私のほかに一億三千万もの人間がいる。そのほんの一部の人でも膨大な数だ。彼らはきっと私の知らない変な人や奇妙なモノを見ているにちがいない。
(「メモリークエスト」高野秀行 より引用)

いやいや、高野さんほどの人は、なかなかいないと思いますけど・・。

2010/6/21