人生フルーツ

2021年7月24日

「人生フルーツ」監督 藤原健之 ナレーション 樹木希林

 

良い映画を見た。小さな映画館の一館上映、地味なドキュメンタリー映画だからどうせガラガラに空いているだろうと思って行ってみたら結構な行列ができていた。満席だったけれど、座布団席なら空いていた。のんびり座っていたつもりだったが、終わったら腰と膝がガチガチに固まっていた。年は取りたくないのう。
 
建築家の津端修一さんと妻の英子さんの二人合わせて177歳の夫婦の温かく豊かな日々を描いたドキュメンタリー。雑木林に囲まれた小さな平屋の自宅で、土を耕し果実を実らせ、そして意義深い最後の仕事に向かう。生きることの素晴らしさ、美しさ、温かさをしみじみと見せてくれるとても良い映画だった。
 
この映画を知ったきっかけは、年末の「伊集院光とらじおと」である。ゲストに樹木希林が来るというので楽しみに聞いていたら、彼女はこの映画のプロモーションのために出演していたのだった。なんと、ナレーションをノーギャラで引き受け、しかも独自にプロモーションまでやって回っているという。この映画の試写を見たという伊集院が、あまり先入観を持たずに、何も知らずに見たほうがいい映画だ、と言うので、建築家の話だという情報だけで見たのだが、それがまた良かった。
 
妻の英子さんはいわゆる昔の大和撫子なんだが、いつも笑顔で、働き者で、夫思いで、強くてしっかりとした素敵な女性だった。皺だらけの笑顔を拝見していると、美しい顔とはこういうことを言うのだ、とはっきりと思った。歳を重ねるごとに美しくなる顔もあるのだ。私がそうなれるかどうかは知らないが、増える皺も、隠せないシミも、気にしなくていいやと思った。
 
東京では「ポレポレ東中野」ただ一館でしか上映していない。地方で幾つか上映する映画館があるが、もっとたくさんの映画館で広く上映されるといいなあと思う。見たら必ず心が温まる良い映画であった。

2017/1/10