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「凄絶な生還 うつ病になってよかった」
竹脇無我 マキノ出版
先ごろ亡くなられた俳優、竹脇無我の闘病記。八年かけてうつ病を克服し、その後俳優にも復帰されていたのに、残念なことをしました。
子どもの頃、「大岡越前」という時代劇を見ていました。好きとか嫌いとかじゃなくて、父が見ていたからなんですが、あれに出ていた加藤剛も、竹脇無我も、いま思い出してみても、すばらしく美しかった。美形とはああいう人たちを言うんじゃないかと思います。
綺麗な人が老いを受け入れていくのは、きっと私のようなおへちゃが老いさらばえていくよりずっと大変なんだろうと思います。
無我さんがそのせいで欝になったとは言わないけれど、かっこよくあらねばならぬというプレッシャーは大変なものだったのだろうな、と想像できます。
この本は、自殺して亡くなられたお父様のことや、その後早逝されたお兄さまのことなどが冷静な筆致で書かれていますが、自分の闘病については実はそれほどしっかりは書かれていません。自分が病であることを受け入れるまでのことは、丁寧に書いてあります。彼にとっては、うつ病である、ということを受け入れるまでのほうが、大変だったということなのでしょう。
後ろの方にはうつ病のセルフチェックシートや受診のポイントが載っていて、実用本的な感覚があります。そういう目的で書かれたのかもしれないけれど、私はもっと人間としての竹脇無我が読みたかったなあ。って、わがままなんでしょうね、それは。
2011/9/21