獣の奏者 外伝 刹那

獣の奏者 外伝 刹那

2021年7月24日

38        「獣の奏者 外伝 刹那」 上橋菜穂子 講談社

「獣の奏者」の外伝です。
エリンとイアルの恋の物語と、エサル師の若かりし頃の苦い恋、そしてエリンとイアルの息子ジェシの幼い頃の小さなエピソード。

夫が図書館に予約していて、やっと届いた本。
「獣の奏者」は、おちびも楽しんで読んでいて、新刊があるなら、私にも読ませてね、と言われていたのだけれど。
夫が「次の予約も入ってるので、延滞しないようにさっさと読んで。それから、おちびに読ませていいかどうかもついでに考えて。」ですって。
ええ?それって・・・読ませられないような内容なの、と尋ねると、だから、それも考えて欲しい、と。

作者があとがきでこんなことを書いています。

 エリンの成長とともに、対象の年齢層もあがってくるのを感じながら書き継いできて、本編が完結したあとに生みだしたこの本は、自分の人生も半ばを過ぎたな、と感じる世代に向けた物語になったようです。
人生というものがどれほど速く、あっけなく過ぎ去ってしまうものかを実感しはじめた人たちに、楽しんでいただければと思います。

なるほど。
たしかにこの本は、大人向けに書かれていると感じます。
おちびが読んで、どれだけわかるだろう。
文字面なら読めるけれど、ここに描かれていることの、どれほどがわかるかと考えると、もう少し、大人になってからでないと、受け取れないだろうと思われます。
とりわけ、エサル師の恋の有り様を理解するのは、難しすぎる。
ジェシの愛らしさも、今の私には胸が熱くなるほどですが、若い人には、どうなのだろう・・・。

でも、いい本です。

全ての断片的なことは、一見ばらばらに見えるけれど、じつはなにかでつながっていて・・・・・それを見られる視点を見つけることさえできたら、この世のすべてがつながっているさまを見ることができるんじゃないかって・・・・

というエサルのことばでつながれる、ユアンとの関係。
エリンが踏み出すことで始まる、イアルとの関係。
自分の人生を諦めない二人の女性の姿に、作者の意思を私は感じます。

おちびには、もう少し大きくなってからね、って言おうかな。

(引用はすべて「獣の奏者 外伝 刹那」より)

2011/5/19