古い洋画と新しい邦画と

古い洋画と新しい邦画と

2021年7月24日

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「古い洋画と新しい邦画と」小林信彦 文藝春秋

週刊文春のコラム「本音を申せば」2015年連載分を収録した本。かつては週刊文春を毎週読んでいたが、ここしばらくは一年に一度、本にまとめられてから読むようになっている。

小林信彦のコラムは頑固で厳しくて鋭くて他の誰にも書けないものだ。私が今お気入りの伊集院光のラジオの凄さを教えられたのもこの人からだったし、「あまちゃん」を見てみようと思ったのも、辛口のこの人が褒めていたからだ。

人は年をとるなあと思う。安倍政権批判をこのコラムのそこここで展開していた小林信彦だったが、だんだんそれがぼやきというか、愚痴めいたものになっていて、最近は社会的なことよりも昔見た映画の話が中心になっている。本人もそれを認めていて、行動範囲の狭さと情報を集める気力のなさを嘆いておられる。そういうわけで、話はどうしても昔見た良い洋画と、たまに褒めたい邦画が題材になってしまう。

とはいえ、この人に勧められる映画は確かに良いものばかりで、また驚くほど鮮明に見どころを覚えているのがわかる。読んでいる時は、これも見たい、あれも見たいとなるのだが、読み終えると見たかったはずの映画の題名をあんまり覚えていないのは、こちらも年取ったせいなのか。

こんなコラムをかける人は他にはいない。お年を召されたのが気がかりだが、いつまでもお書きいただきたい、と願ってやまない私である。

2017/4/21