君たちが知っておくべきこと

2021年7月24日

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君たちが知っておくべきこと 未来のエリートとの対話」佐藤優 新潮社

 

この本は、灘高校の生徒たち二十数人が佐藤優の話を聞きに来た、その記録だ。参加者はみんな佐藤優の著作を読んで、自分なりの意見、反論質問など抱えてやってきた。彼らとの真摯な対話は非常に知的刺激に溢れた興味深いものとなった。
 
この本は、いわゆるノブレス・オブリージュ(高貴さは義務を強制する)を基本としている。つまり、エリートは社会の指導層として果たすべき特別の義務を持つということを基盤としている。日本ではエリートと言うと否定的な意味合いで捉えられがちだが、真の意味でのエリートが国を牽引していくことの重大さをこの本では真正面から捉えている。
 
私の如き浅学のおばさんには無縁の対話ではあるが、結果的には常日頃私自身が考えていたこととそう遠くない話をしているじゃないか、と思えて笑えた。勉強とは大学に合格するための所詮意味がないつまらないものだとか、受験に関係のない科目は勉強しなくてよいという考え方がどれだけ間違っているか、とか、そんな考えや風潮が反知性主義を生み出す元となってしまっていることとか、本当に大事なのは約束を守ること、そして、出来ない約束はしないことであるとか。そういった基本的な考えが、いかに大事であるかが驚くほど深い教養に裏打ちされて説明されている。
 
この対話に参加した高校生たちが真の意味のエリートとなって社会を牽引していけたらいいのだがなあ。と言うより、エリートじゃなくたって、これを読めば得るところはいっぱいあるのだ、と思う。

2018/2/26