天才になりたい

2021年7月24日

41

「天才になりたい」山里亮太 朝日新書

 

ずいぶん昔、南海キャンディーズをM-1の決勝で初めてでみた時はびっくりした。それまで見たことがない異様なコンビだった。審査員の西川きよし師匠が目玉をさらに大きく見開いて「しずちゃん、ボクとコンビを組んでください」と言ったような記憶がある。
 
その頃は、しずちゃんの特異性にばかり目が行っていた。猛獣使いの山ちゃんの実力に気づいたのは、ずいぶん後である。しずちゃんが女優デビューしたり、ボクシングでマジになったりしている間、山ちゃんはひたすら一人で仕事をしていた。通行人にいきなりクイズ仕様の帽子をかぶせて「問題!」とクイズを出し、その人の個人的な事情に踏み込んでいく番組で、彼の瞬発力に感心した。深夜ラジオのしゃべりも飽きさせなかった。しずちゃんがあちこちを変遷して、また漫才に戻ってきて、最後のM-1に挑戦したのもかっこよかった。山里、いいぞ、と思った。
 
この本は、そんな南海キャンディーズの山ちゃんの青春記である。高校時代にお笑い芸人になると決めて、お笑いなら大阪だ、と一浪して関西大学に入り、寮で生活しながらNSC(吉本のお笑い養成学校)に通い、芸人となり、M-1に出場し、その後、しばらく停滞し、また復活を目指していった経緯が描かれている。わがままだったり、人の気持ちを踏みにじったりしていた、若さゆえの傲慢な部分もありのままに描かれている。
 
人を笑顔にさせる仕事は素敵だと思う。無駄でなにも生み出さないものではあるけれど、人は、無駄なしには生きられない。笑っていろんな嫌なことを吹っ切って、また明日に進める。
 
山ちゃんもしずちゃんもがんばれ、と思った。私はいつも笑っていたい。

2018/7/16