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「居心地の悪い部屋」 岸本佐知子 編訳 角川書店
ブライアン・エヴンソン、ルイス・アルベルト・ウレア、アンナ・カヴァン、ジュディ・バドニッツ、ポール・グレノン、リッキー・デュコーネイ、ルイス・ロビンソン、ジョイス・キャロル・オーツ、レイ・ヴクサヴィッチ、ステイシー・レヴィーン、ケン・カルファス。
これらの作者による、読んでいるとうっすら居心地の悪くなる、訳の分からない小説を集めた本。岸本佐知子は凄いなあ、どこからこんな気持ちの悪い小説ばかり見つけてくるのだろう。
なぜかとても親密な関係に見える二人のうち一人がもう一人のまぶたを糸と針で縫い合わせる話。何かの指示に従っているらしいのだけれど、その指示がはっきりしなくて、ふたりとも困っていたりする。
いびきをかくと恋人に指摘されて腹を立てた男が、自分の寝ている間中の音をテープに取ったら、そこに残されていた、とんでもない会話の話。
ケーキを食べて、丸々とした体になろうと決意するのに、いつまでもケーキが食べられない話。
どれもこれも、読んでいて、いらいらと居心地が悪くなり、不安になり、でも、出口もなければ、解決もない。なんでこんな物語を読まなければならないんだ?と、だんだん不思議に思えてくる。
けれど、それは、よくわからない夢を見ているみたいに、妙な安定感の中にあって、そこから抜けだそうとは全然思えなくて、どこかでうっとりと浸っているような自分がいる。
岸本佐知子は凄い。気持ちが悪い。面白い翻訳家だ。
2012/7/18