彼女のこんだて帖

2021年7月24日

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「彼女のこんだて帖」角田光代 講談社文庫

 

旅のお供の二冊目はこれである。最初に出たのは2006年9月。文庫化される前の、最初の単行本は、ベターホーム出版局から出されている。そう、これは料理本なのである。
 
短編小説がいくつか集められている。前の物語の登場人物の誰かが必ず次の物語に登場する。そして、必ず、誰かが料理をする。本の後半は、物語に登場する料理のレシピと写真である。ベターホーム監修だから、家庭で作れて、しかも美味しそうな料理ばかり。
 
短い中にいろいろな制約があるので、思わず夢中になってしまうような物語はないが、さすが角田さんだけあって、ちゃんと読ませる。いろいろな立場の様々な人物がちゃんとリアリティを持って立っているのは流石である。そして、登場する料理がみんな美味しそうでならない。
 
その中に出てきたミートボールのトマト煮を、娘のところで作ってみたら、好評であった。苦手なはずのセロリもうんと入れてやったが、ぺろりと食べてしまった。レシピがほしいと言うので、そのままこの本を置いてきてしまったら、まだ読んでないのに、と夫が残念そうであった。ごめん、あれは料理本だから。他にも作れそうな料理がいくつもあったので、自炊している娘の役に立ちそうだったから。ベターホームのレシピって、わかりやすくて、おいしくて、いいのよね。

2017/8/7