散歩

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2021年7月24日

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「散歩」小林聡美 幻冬舎

 

小林聡美が好きだ。さっぱり、きっぱりしていて、それでいて控えめで、でも、強い。会ったことはないけど、きっとそういう人だとわかる。「転校生」の頃から、ずっと好きな女優さんだったし、書くものも、賢くて、でも、ひけらかさないで、分をわきまえていて、みごとだと思っていた。
 
この本は、小林聡美が森下佳子、石田ゆり子、井上陽水、加瀬亮、飯島奈美、もたいまさこ、柳家小三治と散歩しながら対談した記録である。人選も、素晴らしい。
 
驚いてしまうのは、井上陽水も、加瀬亮も、柳家小三治も、この一癖も二癖もある男どもが、みんな小林聡美にぞっこんなのである。女として、というわけではない。人間として、すっかり好きになっちゃっているのである。それが行間からひしひしと感じられて、なんだかいい気持ちになる。
 
十九の頃からの彼女を知っているもたいまさこが、いいことを言っている。
 
年取るっていいよねっていうのは実感するよね、見てて。自分がっていうより、小林さん見てて、年取るっていいなって。
 
まあ、いろんな責任はあるにしてもさ、自分を真っ直ぐに生きられるって、いいですよね。
                 (引用は「散歩」小林聡美より)
 
そう、まさしくその感じ。小林聡美は、きちんと経験を経て、いい大人に成長していっているし、自分をまっすぐ生きている。そのことが、ちゃんと伝わってくるような、良い対談集だった。

2014/9/30