縦横無尽の文章レッスン

縦横無尽の文章レッスン

2021年7月24日

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「縦横無尽の文章レッスン」 村田喜代子 朝日新聞出版

村田喜代子さんは、佐野洋子さんと並んで、私がもっとも敬愛する作家だ。どれを読んでも、そうだそうだ、そうなのねー、とひれ伏したくなるほど素晴らしい。その村田さんが、なんと山口県の大学で、文章を書く講義を持っていらっしゃるという。ああ、私が若かったら。村田さんの授業が聞けるなんて、どんなに幸せか、その学生たちはわかっているのかしら。

国語が子どもをダメにする」は、文章を書くには、中身じゃなくて、まず形式を、外側を教えろ!!と強く主張した本だったが、この本は、まさしく中身そのものを教えようとしている本だ。そして、なんと豊かな教え方なんだろう。まあ、文藝創作科の授業だというし、講義する相手が最低限の技術までは獲得しているものとしているからなんだろうけどね。

書くことを教える方法として、数々の文章をまず読ませるところから、授業は始まる。このテキストの選択が、実にすばらしい。そして、なぜ、その文章が優れているのかの説明の、豊かで深いことと言ったら・・・。

講義の記録の合間に、北九州のご自宅から、山口の大学へ行く道中のささやかな日記も書かれていて、それがまた、とてもいい。何を食べたのかという話ですら、何でこんなに心和ませるのだろう、と感嘆してしまう。

「2000年間で最大の発明は何か」という課題は面白かった。各分野の学者、研究者が意表をつく観点から、腕によりをかけ、、機知をめぐらした回答文を寄せている。「空飛ぶ機械」「馬の家畜化」「乾草」はまだわかる。が、「消しゴム」と来ると、うーん、とうなる。「椅子と階段」となると、もう、どうしたら良いかわからないほどだ。それを読むだけでも面白いが、自分で考えてみると、さらに面白い。

2012/11/25