日本ザンテイ世界遺産に行ってみた

日本ザンテイ世界遺産に行ってみた

2021年7月24日

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「日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。」宮田珠己 淡交社

 

宮田珠己のファンである。出した本は、とりあえず、買いである、と決めている。が、たまに外れもあることよのう、と思う。まあ、彼にも生活がある、仕事が必要だ。とはいえ、このように思ってしまうことは、やはり口惜しい。頑張って本を買うから、本当にやりたい仕事をやっていただきたい、と願ってやまない。なんて謗るほど、とんでもなくひどい本だったというわけではないのだが。
 
世界遺産に登録してもらうためには、とりあえず暫定リストに候補地を登録してユネスコに提出するらしい。世界遺産になってしまったら、混んで混んでゆっくり見学もできないから、暫定リストに載っている間に、見たいものは見てしまいましょう、というのが本書の企画。可能さんという編集者が企画をして、ユリカメラさんという写真家が写真を撮って、宮田珠己は文章担当。
 
宮田珠己は、普通の人があんまり興味を持たないような変なものに独自の興味を持ち、好奇心だけでその場に行ってしまって、他の人がどう感じようと、自分がオモシロイと思ったものを、自分だけのヨロコビの中で書く。それが面白いのだ。だが、この本は、そもそもが編集者がリストを持ってきた中から場所を選ぶわけだし、しかも世界遺産というのは、いわば世界中の人が「普通に」興味をもつ場所であって、タマキング(宮田さんのことね)独自の選択眼は生かされない。しかも、もともと宮田さんは世界遺産といった権威付けには全く何の興味もない人なので、そこが今後世界遺産になるかどうかは気にもしていないし、何の期待もしていない。
 
その結果、割と一般的な観光地になりそうな、でもまだ十分には認められていないようなところへ行って、その中で、タマキング的にピクピクしそうな場所をなんとか見つけてそれなりに味わい、咀嚼する、という中途半端な出来になってしまっている。編集者がタマキングの長所(一般的に言うと短所かもしれないけど)を理解せずに企画したのではないかと思えてならない。
 
それなりにどの場所でもオリジナリティを生み出そうと頑張っているタマキングのがんばりは、なんとなくわかった。わかったけど、宮田さん、お金にならなくても好きなことだけやってたほうが健康にはいいかも、と思う。お疲れ様でした。

2015/10/7