日本酒ドラマチック

日本酒ドラマチック

2021年7月24日

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「日本酒ドラマチック 進化と熱狂の時代」山同敦子 講談社

 

実は、私は酒飲みである。飲酒は罪であると教える家に育って、大学生になってコンパで日本酒を初めて飲んだ時、この世にこんなにうまい飲み物があるかと思った。以来、お父さんお母さんごめんなさい、私は罪人です。
 
飲酒の入り口は日本酒であった。その後、ビールの美味しさに目覚めたり、ワインの奥深さに唸ったり、シャンペンにはしゃいだりしたが、日本酒が常に基本にあった。妊娠、授乳、ならびに健康上の理由から飲酒を控えることもあったが、今は程々に楽しむところに落ち着いている。
 
割と近所に地酒を色々取り揃えている居酒屋がある。そこで出会った「而今」という酒が素晴らしくうまいと思っていた。夫がこの本を見つけてきて、感心して唸っていたので読んだのだが、最初に登場したのがこの而今の杜氏さんだ。思ったよりずっと若くてびっくりしてしまった。
 
この本にはいくつかの志ある地酒の杜氏や蔵元へのインタビューと紹介、それに酒米や麹や酒樽の薀蓄が載っている。本のすべてがずっしりと酒まみれである。読んでいると、飲んでみたい銘柄が次々と出てきて、今すぐにでも酒屋へ飛んで行きたくなるが、そうそう簡単には手に入らない銘柄ばかりなのがちょっと残念だ。
 
ひとつひとつの酒の背景にはドラマがある。若い杜氏さんたちが互いに励まし合い、影響し合い、助け合いながら新しい酒作りにチャレンジしていく姿は感動的でさえある。プロジェクトXっぽいね、と夫と言い合ったのだが、酒への情熱が心地よく胸を打つ本である。杜氏や蔵元の皆さんは普段はけっこうワインを飲むというのは意外だった。たしかに日本酒を飲むと、出来はどうだとか、この酒はどんな作り方をしているのかとか、香りは、酸は、甘みは・・・と仕事モードに入ってしまうというのもわかる気がする。でも、みんな日本酒愛にあふれていて、物作りっていいよな・・・と心から思わせてくれる。
 
適度の飲酒は健康にいいとも言う。決して依存症にならぬよう、ほどほどに、限度をわきまえて、楽しくお酒を飲み続けたい。この本は保存版にしてもいいかも。

2016/10/10