昨日がなければ明日もない

昨日がなければ明日もない

2021年7月24日

95

「昨日がなければ明日もない」宮部みゆき 文藝春秋

宮部みゆきは時代物のほうが好きである。というのも、現代ものだと、なんだか後味が悪いというか、宮部みゆきの人の悪さが出てしまうなあ、という気がするからだ。この本も、面白かったのだが、後味は、すこぶる悪かった。宮部みゆきが、人を許していないのがまざまざとわかってしまうからかもしれない。

一話目は、体育会系の女性蔑視のマッチョな男。二話目は、我が子を自分たちのいいように支配する親。三話目は、周囲の人達と調和することのない、自分の都合とお金のためだけにしか生きられないわがままな女性。みんな、私も嫌いな人たちだ。友達になろうとも思わない。たしかにそうではあるけれど。でも、こんなふうにすっぱり断罪してしまっていいのかなあ、彼らにもあるであろう彼らの論理と言うか理屈と言うか言い分と言うか、そういうものへの斟酌はないのかなあ、とどこかでふと思ってしまうのである。

ところで。この本は、ベトナムのハノイと、帰国の機内で読んだ。暑く湿気の多い場所で読むと、余計に人間の人いきれのようなものを感じた。「大量廃棄社会」は行きのバスと飛行機の中で読んだ。ベトナムでバイクを乗り回すたくましい女性たちを見て、彼女たちが、縫製工場で低賃金に甘んじることなく、言うべきは言い、主張すべきは主張していけるといいなあ、と思ったものである。ベトナムのお話は、また、そのうちに。

2019/9/18