昭和十年の女の子

2021年7月24日

133

「たくさんのふしぎ 昭和十年の女の子 大阪のまちで」

牧野夏子 文 鴨居杏 絵 福音館書店

 

大阪に住む小4のモモちゃんが、ひいおばあちゃんのスミ子さんに昔のアルバムを見せてもらう。そこから昭和十年の大阪の世界が広がる。
 
歴史を学ぶ楽しさってこういうことだ、と思う。古い遠い昔のように思えるけれど、その時代には、自分と同じような年齢のひいおばあちゃんが、自分と同じように毎日を生き生きと暮らしていた、とモモちゃんは知る。いつもいつも目の前にあるのは「今」であって、今の積み重ねが歴史になっていく。
 
古い地下鉄の車両はレトロでステキだし、子どもたちの服装も、今見てもお洒落で可愛らしい。デパートの食堂のお子様ランチは美味しそうだし、キャラメルやドロップはいつだって甘い。
 
本当は、そこから今に至るまでの間に、その街は焼け野原になり、たくさんの人が亡くなったのだけれど。だけど、そこには確かに生活があった。人々が生きていた。
 
過去を、今と同じようにいきいきと捉える目を持つことは、多くの学びとなる。また、それは楽しみでもある。今を生きながら、その時を思って街を見ることで、多重なものが見えてくる。おばあちゃんの昔話は、ただの昔話だけじゃなくて、そこからいくらでも世界を広げてくれるタイムマシンだ。
 
イラストを描いた鴨居杏さんって、鴨居玲や鴨居羊子のご親族かしら、とちょっと思って調べたけれど、わからない。ご存じの方、いらっしゃいませんか。

2017/12/10