曽根崎心中

2021年7月24日

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「曽根崎心中」角田光代(原作 近松門左衛門)リトルモア

 

言わずと知れた近松門左衛門の浄瑠璃。それを角田さんが翻案している。
 
映画「曽根崎心中」なら、学生時代に見た。と書くと年齢がバレちゃうかなあ。梶芽衣子がお初を、宇崎竜童が徳兵衛を演じた。お初役の梶芽衣子の足元に徳兵衛の宇崎竜童が隠れていて、橋本功演じるところの悪役、九平次とお初が口論すると、徳兵衛がお初の足に頬ずりしたり、手で触る。そのシーンがやたらと色っぽくて、おお、色香というのはこのように表すものか、と感心したものだ。でも、その頃は実はあんまりわかってなかったぞ、と今は思う。
 
角田光代はうまい。一行も飽きさせないで最後まで持っていく。江戸時代の人が曽根崎心中に熱狂したのはこういうことだったのかと思う。お初の切なさ、強さ、温かさ、苦しさ、赦すことと、諦めること。すべてのものが迫ってくる。例の足のシーンからも、色香だけではない、もっとぞっとするような深い心の動きが見えてくる。
 
昔から人は恋をしてきたのだ。どんなに押し込めようとしても、隔てようとしても、心が動くのは誰にも止められない。人間て難儀やなあ。この歳になると、若いって大変ね、という気持ちがちょっと動いちゃうのがつや消しだけどね。あは。
 
 

2017/4/14