本を読むってけっこういいかも

本を読むってけっこういいかも

2021年7月24日

「本を読むってけっこういいかも」 香山リカ 七つ森書館  14

私は、おみくじを引かない。それほど厳密に心に誓ってるわけではないので、好奇心で一回か二回は引いたことがあるかもしれないが、基本、お金払っておみくじをひこうとは思わない。信じないからじゃなくて、反対に、たぶん、何でも信じちゃうからだ。大吉が出ようが、凶が出ようが、そこに何が書かれていても、結局、そのまんま、それを自分に引きつけて、なるほど、と思ってしまうのが、最初から分かっているからだ。というか、おみくじってのは、そういうものだ、と思っている。

最近、香山リカは、編集者から「どこからでも開けて、いつでも閉じられる、パッと目に入ったところでなにか得るものがある」執筆依頼を受けることが多いという。

そういえば10年ほど前、新書ブームがやって来てミリオンセラーが連発されたとき、ある新書編集者が新聞でこう断言してたのを読んで驚いたことがある。
「いま求められているのは、1時間で読めて、後に残らない本です」
それでも読むのに1時間、かけられるなら、まだよい。今は、おみくじを読むかのように、数分で見開きを読めて、「なるほど」と思ったり涙がじんわりあふれたりして、後にはあまり残らない。そんな読み方のできる本が求められているようだ。

引用は「本を読むってけっこういいかも」より

私はそんなおみくじみたいな本は好きではない、と思っていた。開いたページを読んで、書かれていることを、自分になんとなく引きつけて、わかったような気持ちになってしまう読書なんて、つまらない、と。けれど、実は最近、じっくりを本を読むことがあんまり出来ていない自分に気づく。途中で不意にページを閉じたくなったり、長い物語に疲れて、気持ちが何処か別のところへ行ってしまうのだ。何か、気持ちが鬱々として、ひとつのことにエネルギーを注げない。それは、たぶん、この震災と、その後の原発の状況のせいだろうと思う。私のように、安全でいつもとかわらぬ生活を送れる状況にあるものであっても、さえ。

香山リカは、この本の中で、最初から最後までじっくり読み通すことに意義のある本を紹介しようとしている。そういう本の持つ意味を、もう一度取り戻そうと考えているようだ。そして、本来、私もそういう本を、好む。というより、本を読むとはそういうコトだと思っている。

しかし、そういっているこの本自体は、パッと開いて、目についたところを読んで、すぐ閉じられる作りになっている。まあ、本の紹介本だから、当然っちゃ当然だけれど。そして、そのおかげで、私も最後まで読み通すことができた。ああ、この矛盾よ。と、私は苦笑いしてしまった。

とはいえ。この本を読んで、図書館にリクエストした本が、多々、ある。これから、それを読んで、またここに感想を書いていければ、と思う。
ゆっくり、じっくり本を読める状況がまた来ますように。
いま、辛い環境にある方々が、本を読むことで、何らかのエネルギーを得られるような時が来ますように。

2011/4/17