那覇の市場で古本屋

那覇の市場で古本屋

2021年7月24日

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「那覇の市場で古本屋」宇田智子 ボーダーインク

 

夫が面白かったというので読んだ本。もともとは、「本の雑誌」で紹介されていたかも。
 
ジュンク堂は好きな書店だ。大きくてなんでもそろっていて、店員さんの質がいい。ちょっと尋ねると店中を走り回って欲しかった本やその関連本を真剣に探してくれる。転勤でいろいろな場所のジュンク堂に行ったが、どこも変わらず良い本屋だった。
 
そんなジュンク堂に努めていた著者は、那覇に支店を出す話を聞いて、転勤を申し出る。そして、那覇で過ごすうち、牧志公設市場の小さな古書店に出会い、そこの閉店にあたって、後を継ぐことになる。
 
なんで沖縄に行ったのか、なんで古書店を始めたのか、自分でもよくわからない、説明できない、と著者自身が言っている。そう、なんだか流れがそうなったのだ。だが、この流れの心地いいこと。この小さな古書店の居心地の良いこと。沖縄の空気ののんびりさ加減といったら、もう・・・・。
 
回転までの道筋は、とても慌しく大変でもあったはずなのだが、確かにそう書いてあるのだが、でも、ゆったりと確実に、沢山の人の温かい手を借りて、のどやかに始まった・・ように感じられる。
 
たぶん、著者の人柄なのだ。丁寧で、誠実で、親切で、前向きで、でも焦りすぎないし、求め過ぎない。本が好きだという気持ちと、良い本に出会いたい、売りたいという気持ちがあふれていて、どこにも嫌な感じがない。地元にしかない本とどう巡り合うか、どう見つけるか、どう手にとってもらい、どう買ってもらい、読んでもらうか。本への愛なしにはできない仕事ぶりである。
 
沖縄は、何度行ってもいつ行ってもいい。牧志公設市場は大好きだ。おまけ日本は大好物ときた。一度行かなければ。小さな小さな古本屋ウララに。

2016/5/4