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「楽しい夜」岸本佐知子 編訳 講談社
「なんらかの事情」の岸本佐知子さんである。なんだか不思議な、ちょっとへんてこりんな海外の小説を翻訳するのがお得意の翻訳者である。今回も奇妙なテイストの小説を集めてきた。おかしくて不思議で、ちょっとほろっとするような作品もあって、この人の集めるものは間違いない、と笑いながら思う。
様々な作家の作品を集めた短編集だ。最初に載っているのが、かつて実家を捨てるかのようにして出てきた女性がボブディランを連れて帰省する話。作者はマリー=ヘレン・ベルティーノ。もはやこれはSFか?と思うほどである。まだボブ・ディランがノーベル賞を貰う前に書かれたんだろうけれどね。
地球上のスペースが手狭になったので、人類は全員、他の生物を体表もしくは体内に寄生させなければならないことになった。
で始まるアリッサ・ナッティングのSFは、まずそこで読む目が止まり、自分だったらどんな生物をどこに寄生させるだろうか、としばらく想像してしまった。豊胸手術をして詰め物の中に水棲生物を住まわせるというのはなかなかすごい。でもちょっといやだなあ。やっぱり頭頂部にちょっとフジツボでも生やしてお茶を濁す程度がいいかな。Tシャツにカエルを・・・って、これは別の話か。
岸本さんは単に翻訳しただけなんだけど、この日とはどうしていつもこんなぶっ飛んだような物語ばかり発掘できるのだろう。世界中には変な作家が山ほどいるのだなあ。
(引用は「楽しい夜」岸本佐知子編訳 より)
2017/4/26