江口寿史の正直日記

江口寿史の正直日記

2021年7月24日

38

「江口寿史の正直日記」江口寿史 河出書房新書

 

話は長くなる。
 
5月の中旬頃、夫から永青文庫へ行きたいと誘われた。永青文庫ってのは、肥後熊本の大名細川さんちのお宝が展示されている場所だ。ついでに街歩きもしようってことで、我々の母校の最寄り駅から大学の脇を歩き始めたら、あらまあ、全く当時の面影がなく、懐かしさすら感じないほどの変わり様。まあ、講堂だけは相変わらずだったけどさ。
 
北方面へ歩いて行くと、関口芭蕉庵というところに出る。静かな庭のような場所で、試しに覗いてみると、思ったよりも奥深く、緑が美しい。案内所のおじさんが、松尾芭蕉が神田川の改修工事に関わった時に数年間、ここに住んだと教えてくれた。大学のすぐ近くなのに、こんなところがあるなんて知らなかったねー、と夫と言い合う。
 
そこからしばらく歩くと、ありました、永青文庫。なるほど、お大名のお宝がずらずら展示してあって、ここのお殿様は文化の後援者的な活動に熱心だったことが伺える。さすが持ってるなー、と貧乏人らしい感想を持つ私。

 
 
そのすぐそばの学校っぽい建物から楽器の音がして、なんだろうね、ここは、と見ると「和敬塾」と表示が。あとで調べてみると、細川家の地所に作られた男子学生寮で、あの村上春樹もここにいたことがあるんだって!!
 
そこからさらに歩くと、東京カテドラル。日曜日なので礼拝の最中かもしれないのだけど、こっそり覗いたら、礼拝は終わって諸連絡(?)を司祭さんが話してらした。その話の音の響きが素晴らしく、よくできた建物だなー、と感心する。
 
 
カテドラルから、なかなか上品な住宅街を延々と歩く。日本女子大学って、おお、こんなところにあったのねー、なんて驚く。東京の街も、歩いてみないと知らないことが多いんだな。大分歩いて疲れたところで、雑司が谷の鬼子母神通り商店街。実は、ここで古本のフリーマーケットが行われてると聞いていたんですな。
 

道端に、箱を幾つか置いて、その中に本が詰められている。一店舗(?)二箱程度かな。箱の中身を見ると、店主の読書傾向が伺えて、なかなか楽しい。趣味が同じ人がいると、箱ごと買っちゃいたくなるけど、危ない、危ない・・・これ以上、本を増やしてどーすんの。と、言いつつ、私も夫も何故かいつの間にか荷物が増えている・・・ああ。
 
で、その箱のなかに、この本が入っているのを発見したんですな。やっと本の話にたどり着いたわ。
 
江口寿史は、線のきれいな絵を描く漫画家で、一時期、締め切りを守れなくて姿を隠しまくっているというネタで有名だった。雑誌で新しい連載が始まっだので、大丈夫かな、と心配したら、その題名が「なんとかなるでショ!」だったので笑ったことがある。マンガ自体はあんまり読んだことがないのだけれど、そんな彼の書いた日記なら興味深い、と思ったのだ。
 
でも、分厚い本だし買う程でもないな、と思ったので、その場では題名だけメモして、図書館で借りたのでした。あら、結局、散歩は関係ないじゃん・・・。
 
で、江口さん、仕事しなくちゃしなくちゃと言いながら、毎日遊びに行ったり飲んだりしている。ずいぶん若い奥様がいるのね、と思ったら元アイドル19歳と結婚してるんだって!で、漫画家としてどうよ、と追い詰められて、とある原作者と組んで仕事をしたり、それでも書き溜めができなくて説教されたり、なかなか切ない。
 
いつの時代かを確かめずに読んでいたら、いきなり、夜、アメリカのビルに飛行機が突っ込んだり、ナンシー関が亡くなったりして、おお、その頃だったのか・・・とわかった。板尾創路はいつも読んでるけど、私、人の日記を読むのが案外好きだな。サイテーなやつだわ。
 
で、散歩に戻ると、フリーマーケットを覗いた後は、鬼子母神にお参りしたのでした。ここの参道がネジ曲がっているね~、と言ったら、夫曰く、神様が逃げ出さないようにそう作られていることもあるらしいよ、と。なるほど。
 

本の話を書くつもりが、思いがけなく散歩話にもなったのでした。ちゃんちゃん。
 
 

2014/6/11