漂うままに島に着き

漂うままに島に着き

2021年7月24日

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「漂うままに島に着き」内澤旬子 朝日新聞出版

内澤さんは「棄てる女」以来かな。この人の本は、全部買ってもいいと思っている。

乳がんを克服して以来、東京の狭い住まいに高い高い家賃を払って過ごすことに疑問を感じるようになった作者が移住先を探し、小豆島に決め、実際に住んで一年程経つまでの話。

私は、小豆島には二年前に行っている。ちょうどその頃、内澤さんは移住を検討されていたらしい。たしかに小豆島は離島の割には結構大きくて、ある程度のお店もあるし、風通しも良さそう。高校が二つあることを内澤さんは指摘していて、なるほど、と思う。高校が二つあるということは、島民がそれぞれに知らない人達がいる、自分たちとは違う文化がある、ということを認識できるということにつながる。そうだよなあ。

小豆島に移住する人は結構いるらしくて、よそのもの同士の交流もあるし、地元民もそれを受け入れてくれる土壌があるようだ。とは言え、物件探しは別荘が廃墟化したものとか、土砂崩れで一気にやられてしまいそうなものとか、なかなか難しい。役場が移住者向けの物件探しに一役買ってくれるところはありがたそうだが。

内澤さんは、知り合いが先に小豆島に移住していると言うこともあるし、景色は素晴らしく、とりわけ海が綺麗で、魅力的ではあるんだが、外食先が殆ど無いのがつまらないそうだ。読んでいて、おお、小豆島、良さそうだなあ、と一緒に移住したい気分が盛り上がったんだが、美味しいものを食べに行くには高松や岡山にでなければならんとなると、面倒だしなあ。車を運転できないと相当困難に陥りそうなのも難点だ。

内澤さんは運転がひどく苦手なんだが、そこは島の人達が寛容に受け止めてくれるらしく、彼女の車の後を数珠つなぎにプチ渋滞となって車が並んで走ったりしても怒られないみたいだ。そういうところはいいなあ。

ともあれ、一年ほど経って何があったか、また転居を余儀なくされたということだ。彼女はある程度の知名度もあり、小豆島に住んだということで取材も受けねばならないこともあり、何らかの問題が起きたらしいが、詳しくは書かれていない。が、まだ小豆島にいることはいるみたいね。山羊のカヨと、その息子も飼っているというから楽しそうだ、大変だろうけど。

たしかに東京にしがみつくことはないよなあ、と思う。住居費が高すぎるしね。でも、何軒かのお気に入りのお店があって、好きな散歩道があって、知人友人が何人もいて、実家にも近くて、となると東京も離れがたいし。ううう、悩むところだわ。

そうだ、思い出したんで書いておくけれど、離島に移住することの困難のひとつに、内澤さんが美人だから、という理由を上げた人がいたという。狭い人間関係に一人の美人が投入されることですべての関係性が崩れていく・・・というのは確かに見たことがある。残念ながら、当事者になったことはないけどね。内澤さん自身は、美人じゃないけれどさ、ぜんぜん違うけどさ、まあ、美人だとしてみたところで出産可能年齢を過ぎてるし・・・みたいなことをゴニョゴニョ書いていらしたが、いや、内澤さん、実はとっても美人なのである。だからといって、移住の難点となったかどうかはわからんがね。

2016/9/20