私の家

私の家

2021年7月24日

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「私の家」青山七恵 集英社

 

青山七恵は初めてかも。芥川賞作家なのね、全然縁がなかった。
 
都会にでていた娘が法事で帰ってきて、そのまま居着いてしまった。母親は元体育教師で、時々過去を思い返してうんざりした気持ちになる。小さな店をやっている大叔母は、初老の男性三人のファンに囲まれているが、そんなにしあわせでもない。行方の知れなかった叔父はニュージーランドで暮らしていた。祖母は、人生にそこはかとなく不全感を持っていたようだ・・・。
 
いわゆる家族小説。子供用の赤い着物が世代を渡っていくことが何らかの象徴になっているのだと思われるけれど、今ひとつ弱いような。同じ場所で一緒に過ごしていながら、互いにあんまりわかり合っていない、でも、なんとなく共有されている事柄がある。家族ってそうだよなあ、と思えるような感じは、それでもちゃんと描かれている。
 
最近、月に一度、独居となった母を訪れて一泊している。話し相手のほしい母は、食事をしながら、あるいは食べ終えてからも、ずっと喋っている。過去の話。辛かったこと。大変だったこと。困ったこと。その合間に、楽しかったこと、良かったことも時々混じる。母の歴史の中に、私も一緒にいた時期があるというのに、母の語るストーリーは私の知っているものとは微妙に、あるいは大幅に違う。同じ時、同じ場所で違ったものを見ていたのだなあとつくづく思う。家族ってそんなもんなんだな、と何度も何度も思い知らされる。そんな中で読んだからか、ああ、そうだよね、わかるわかる、と思える本ではあった。

2020/2/12