絶滅寸前季語辞典

絶滅寸前季語辞典

2021年7月24日

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「絶滅寸前季語辞典」夏井いつき・編 東京堂出版

 

「プレバト!」という番組が好きでよく見ている。一番好きなのは、何と言っても俳句のコーナーである。芸能人たちが弄りだした俳句を、夏井先生がバッサバッサと切っていく。素晴らしい句には賞賛を惜しまず、カッコばかりの表面的な句には容赦しない。凡庸な句に彼女がちょっと手を入れただけで、ガラッと違う景色が見えてくる。夏井先生は、実に素晴らしい。
 
この本は、その夏井先生が編んだ、絶滅寸前の季語ばかりを集めた辞典である。「藍微塵」ってなんだか知ってる?忘れな草の別名なんだそうだ。そんな美しい季語ばかりじゃない。「拝み太郎」はカマキリの別称だし、「朔旦冬至」は陰暦11月1日が冬至に当たることで、二十年に一回しかないという・・・って、知らないよね、誰も。
 
長い季語もある。「獺魚を祭る(かわうそうおをまつる)」は七十二候のひとつで、陽暦二月十九日から二十三日の頃なんだって。カワウソは、取ってきた魚をすぐに食べないで、そこここに並べておく習性があるんだそうだ。十文字もある季語って・・・。例句は

   泣き虫の獺魚を祭りけり  夏井いつき
 
もっと長い季語もある。「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」って、どーしたらいいのって思う。
 
   童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日日和とはなれり  夏井いつき
 
季語辞典ではあるが、解説の中に夏井先生の子供時代から、学生時代、子どもを育てていた時代から今に至るまでの様々な思い出が登場し、あのきっぷの良い人柄が浮かび上がる。動物占いでは、ペガサスなんだそうだ。
 
(引用は「絶滅寸前季語辞典」夏井いつき・編より)

2018/1/24