蘇える変態

蘇える変態

2021年7月24日

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「蘇える変態」星野源 マガジンハウス

 

星野源を知ったのは、NHKの「LIFE]という内村光良がやっているコント番組だ。最近のミュージックシーンにはまっっったくついて行けてないし、見たいテレビ番組は録画してCMをすっ飛ばしてみてしまうから、CMソングも殆ど聞かない。だから、星野源がミュージシャンだなんてことも、日焼け止めのCMソングを歌ってることも知らなかった。ましてや、文筆家だなんて知るはずもなかった。
 
この本を知ったのは、たぶん何かの書評でだったと思う。やけに人気で、予約を入れてから手元に来るまで数ヶ月かかっているから、読もうと思った動機なんてすっかり忘れてしまった。強いて言えば、題名が面白いと思ったことは確かだけど。
 
2011年から2013年まで女性誌「GINZA」に連載していたエッセイに加筆修正書下ろしを加えたものがこの本である。ミュージシャンで役者でもある若者が、ちょいとエッセイも書いちゃいましたってか、と軽い気持ちで読みだしたが、なかなか鋭い筆致に、おお、君、できるではないか、と態度を改め。と思ったら、仕事に追いまくられる過程でとんでもない頭痛に追いまくられ、救急車で運ばれ、くも膜下出血で緊急手術・・・と事態は急展開。闘病の末に涙の復帰を果たしたと思ったら、定期診断で再発発見。更につらい手術と闘病が待っていたなんて。
 
闘病記は、ほんとに痛そうでつらそうなのに、でも、どこかでしっかり自分を客観的に見て、そして、ちゃんと楽しんでる、というか、生きてることを喜びとしている部分が保持されていて、すごい。苦しみを乗り越えるための工夫も、おお、わかるわかる、でも、これって公にはなかなかできないよな、というあけすけなものがあって、それが笑いを誘う。でも大変だっただろうなあ。
 
こんな苦難を二度も乗り越えたからには、ぜひとも元気で頑張って欲しいし、良い音楽を、良い演技を、良い文章を作り出してほしいと願わずにはいられない。星野源、音楽も聞きたくなったぞ。映画も見たいぞ。と、思わせるだけの本であった。なかなかすごいぞ。

2015/3/10