早く家へ帰りたい

2021年7月24日

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「早く家へ帰りたい」夏葉社 高階杞一

 

夫が図書館に予約していた本。珍しい名前だったので「これ、何?」と聞いたら、「詩集。読みたかったら、先に読んでいいよ。」と言われた。詩集なら、すぐに読めるかな、と開いてしまった。
 
うわーん。つらかった。なんの予備知識も持たずに読んでしまった。
 
この世で一番の不幸は、もしかしたら子どもに先立たれることなんじゃないか、と何度か夫と話し合ったことがある。それ以上の不幸というものが、あまり思いつかない。
 
この詩集は、作者の一子雄介くんが、四歳の誕生日まであと二週間を残して亡くなってしまったあとに書かれたものだった。ヒルシュスプルング氏病という、腸に神経のない病気で、生まれてわずか一年の間に五度もの大きな手術を受け、それでも退院でき、幼稚園にも通えるようになって、プールではしゃいだ数日後のことだったという。
 
わかり易い言葉で、まっすぐに雄介くんへの愛情が描かれ、そして、それを失った悲しみがそのまんま言葉にされている。胸が痛い。小さな命が、どんなに周りのものを暖かくさせるか。それを失った時、どれだけ取り返しのつかない悲しみに襲われるか。言葉が、それを鮮明に、まっすぐに伝えてくる。
 
ここに載せているのは夏葉社版であるが、図書館から借りたのは、倒産した理論社版であった。

2019/8/7